第8話) 縮毛矯正の違い!

オーストラリアに来てビックリしたのが「縮毛矯正」でした。

何がビックリって、その料金体制と施術にかかる時間。

ショート – $600、(約5万円) 5時間。

ミディアム – $800、(約6万5千円) 6時間半。

ロング –  $1000、(約8万円) 8時間。

エクストラロング – $1200 (約10万円)10時間。

こんなに高い縮毛矯正であっても、ストレートヘアーに憧れているお金持ちの女性は、クレジットカードを持ってサロンに来るのです!

日本はというと・・・?

価格破壊の真只中、「新規のお客様に限り8千円」なんていうのもあるから驚きだ! 高いところでも2万円超える程度だろう、所要時間も3時間程度で終わる、長くても4時間あれば十分だ(カット別)。

この日豪の縮毛矯正における格差がどうしてなのか、僕なりに分析をしてみた。

豪州の場合、縮毛矯正は特殊な技術なので、できる技術者がいない。中途半端にやろうとして事故があった場合、裁判にもつれ込むケースがあるので、縮毛矯正を自身持ってやるサロンが少ない。需要はあるのに供給が非常に少ない、よって料金が高くなる。

所要時間が6時間も8時間もかかってしまうのは、いくつかの理由がある。
一つは単純に手が不器用、手が遅い(汗; そして、話が好きなので、手よりも口が動いている(笑)ランチタイムを平気で作って休憩する(笑) それだもの6時間以上かかるのも仕方が無い。でもこれらは努力で克服できそうなのだが、その努力があまり好きではないらしい。

次は、髪質の問題がある。パーマについて述べた第7話にあるように、髪の毛の質の違いが大きい。日本人の髪は「太いが薬液が浸透しやすく」、短時間で効いてくれる。見た目とは違って、西洋人の髪は今にも「壊れそうなくらい細くて柔らかい」のだが、薬液の浸透には本当に時間を要する。見た目でビビッてしまい日本人の髪と同じ感覚でやってしまうと、結果的に3日後にはクレームとして戻ってきてしまう。

ただ単に、コテで巻髪を創るにしても、オーストラリアの美容師学校では、クルクルと巻いて20秒は置きましょう!と習う。最初は「そんなことしたら、髪の毛こげちゃうよ!」って思いました。日本人の髪ですら、5~7秒も置けば十分ですから、アジア人より細い柔らかい髪に、20秒なんて置けないよ~なんて思ったものでした。しかし、本当に5~7秒程度では、全然形にならない!西洋人の細い柔らかい髪には倍以上の時間をかけないと、逆に効き目が弱すぎるのだという事を学んだ。

そしてもう一つ、薬剤の違いが感じられました。例えばですが、アイロン操作を終えて、二回目の薬液があります(日本では2液と呼び、海外ではニュートライザーと呼びます)。今の日本では2液の置く時間なんて3分とか5分で十分なのです。しかしオーストラリアで主流となっているブランドは20分も置きます。この時間というのは髪質が問題ではなく技術でもない、薬液の性質が異なるからなのです。あくまでも推測ですが、日本でライセンス切れの薬剤を海外に流してコストダウンをしているように感じられるくらいです。

次に日本の縮毛矯正事情はというと、なぜそんなに安いのか?それは、「カットデビューできていないスタッフの仕事」になっているのが一因にあると思うのです。カットができるスタイリストさんだったら、3時間でカットのお客さんを3人やるだけで1万円は稼げるのです。しかし、あれだけ細かい仕事をし、薬液にもコストがかかる仕事を、3時間~4時間かけて8千円の売り上げでは、やってられません。普通にカットを3人やっているほうが良いですから。日本のある美容室のオーナーさんとお話をした時に、「縮毛矯正は、できることならメニューから外したいくらいだ」とこぼしていました。

そこで、カットデビューできない若手のスタッフが2人がかりで右側と左側とで作業をしていくのです。そうやって短時間で利益が上がるように、稼げる技術者には触らせないようにして、料金を下げているのです。ただ、ここで問題が生じてきます。縮毛矯正は見れば簡単そうに見えますが、実際には長年の経験と勘が必要で、マニュアル通りにやると失敗してしまいます。

僕のお客さんの中でも、前髪だけ縮毛矯正をかけに他店へ行って、若いスタッフにやってもらった結果、顔周りの前髪からもみ上げにかけて、根本から切れ落ちてしまいました。真っ直ぐにしに行ったのに、髪全体が縮れ毛になってしまい裁判を起こしたいと言っていたお客さんもいました。残念な事に、オーストラリア人のサロンで事故にあったのではなく、「日本人」にやってもらって根本から切れ落ちたり、全部の髪が縮れ毛になってしまったりしているのです。

値段を下げて、その結果未熟な技術者の実験台のようになり、失敗して取り返しの付かないことになる。指導する側も責任をもって仕事を与えないと、泣くのはお客さんです。

オーストラリアの場合は、きちんとした毛髪化学まで追求して勉強している技術者が非常に少ないため、お金は高いけど酷い目にあった・・・その結果、縮毛矯正は良くないものだ!という噂になっていきそうで怖いです。

髪の毛の状態を読み取り、その傷み度合いによって薬液を調合し、時間配分を計算し、ひつようなたんぱく質を与えてあげる。アイロン(コテ)のあてる角度、熱の温度、アイロンの進む方向など・・・・同じ状態、同じ条件のお客様はいないですから、一万人一万色を操れる美容師になりたいものです。

今、僕は、日本の薬剤を、経験のある日本人が、相場の半額で、普通のサロンの半分の時間で、しかしクオリティは5倍!10倍!というプロモーションをオーストラリア人相手にしていこうと思っています。英語力がないとできないプランですが。。。