第1話) 海外で髪を切った事ありますか?

海外で生活した人であれば、一度は経験するかもしれない海外の美容師さん(ここではヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど西洋の美容師さんを‘海外の美容師’と称します)のテクニック。誰もが声をそろえて「海外の美容師さんは日本人の髪を理解していない」と言う。

「絶対に写真どおりにはならない」
「パッツンと前髪を切られた」
「これ以上は梳けないと言われて全然梳いてくれない」
「パーマをかけたら大昔のクルクルパーマになってしまった」
「カラーをしたら地肌がヒリヒリと耐えられない痛さだった」
などなど、上げればきりがない・・・。

本当に海外の美容師は下手なのだろうか、日本人だったら全員が上手なのだろうか、アメリカも含め海外で8年働いて見て聞いて感じた事、その中で実際に約4年間オージーと一緒に働いた経験、そしてオーストラリアの専門学校の美容師科で学んだ1年を、日本の専門学校とサロンとを比べながら語っていきたい。

Hairdressing コース
<オーストラリアの美容師科、授業風景>

まず、日本人の髪質と西洋人の髪質が全く別物である。本当に全然違うのだ。1本の毛の直径が、西洋人が0.03ミリに対して、日本人の毛は0.09ミリと三倍も太い、コレは実際に僕がオーストラリアの専門学校で、クラスメイトの白人の女の子の髪が0.03mmで僕の髪は0.09mmだったので間違いない。僕の髪は日本人の中では太い方ではないので、もっと太い人はたくさんいるはず。と言う事は、4倍も5倍も日本人の髪の方が太いのである。

西洋人の、この細くて柔らかい毛なので、どんなに短く切っても寝てくれる。日本人の髪だったらツンツンに立つような髪も、きれいに寝てくれるのだ。カットが下手でも収まってくれるし、ブローが下手でも寝てくれる。しかし日本人の髪では、計算して切らないとブローもできなくなってしまうし、ダンダンの虎刈りカットになってしまうのだ。

クラスメイト全員
<一年間、共に授業を受けたクラスメイト>

この柔らかくて自由自在に動きそうな西洋人の髪だが、薬液の浸透や熱の伝導などはアジア人より効き目が悪い。最初は髪にコシがないから?なんて思ったのだが、そんなレベルじゃなく形がつかない、カラーも色が入らないし、パーマも油断すると全然かからない。硬くて手ごわそうな日本人の髪の方が短時間で形がつき、見た目が柔らかくて壊れそうな毛の西洋人の髪は全然形がつかない。

これは、キューティクルの厚みが違うのと、輪切りにしたときの断面の形が違うからである。まず西洋人のキューティクルの割合が、「毛の40%がキューティクル」に対し、アジア人の毛は「10%程度しかキューティクルに囲まれてない」。

アジア人の直毛の髪を輪切りにしたら金太郎飴のように「きれいに丸を描いている」。その反面、西洋人の髪は殆どがクセ毛でウェーブがついている、と言う事は「輪切りにした時に楕円形」なのである。髪を真っ直ぐにしたりウェーブにしたりと、形を司る結合体は毛の中心部にあるので、西洋人の髪はなかなか中心まで届かないのだ。

この髪の太さと硬さ、キューティクルの多さと輪切りの断面、それプラス文化と美的感覚の違いによって上手が下手かを判断されるので、どこで美容師としての教育を受けたかでその技術者の評価が変わる。

日本人には日本人の髪質と骨格、そして日本の美的センスに合わせた理論を習い技術を取得する。西洋は西洋人に合ったカット技法と理論が確立されている。

そういえば、金髪で可愛らしいオーストラリア人の女の子が日本に滞在し、日本の美容室へ行って酷い目に合ったと話を聞いた。

「どうして日本の美容師はあんなに下手なの?」
「2cmだけ切って欲しいとお願いしたのに、切った後に信じられないくらい梳いたの」

とカットが終わってから一週間は外に出れなくて泣いていた…という女の子にも出くわした事があった。

この第二章では、カット、パーマ、カラー、縮毛矯正、シャンプーなども含めて、何がいったい海外と日本では違うのかを、分かりやすく理論的に説明していこう。

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